ロードバイクはまだ進化できる

ロードバイクはまだ進化できる

投稿日 2025/09/29

9月も末になり、気候がようやく人間が屋外で活動できるウィンドウに入ったので久しぶりにロードバイクに乗りました。あまりにも久しぶりだったので、まずはDi2とパワーメーター、ガーミンと電動ポンプの充電からです。僕は全面的に電動変速を支持していますが、「乗りたいから乗る」という衝動に突き動かされた場合、瞬時には応えてくれません。数少ない電動変速の欠点です。

久しぶりに横から写真を撮ってみましたがクランクを165mmへと短くしてから落差が出てかっこいいです。ショートクランクの最大の利点これです。

この所、CANYON Japanから借りていた最新のグリズルに乗っており、久しぶりに普通のロードバイクだったのですが、驚くことにあまりに乗り味が古臭くて、一世代前のバイクに乗っているようでした。実際に2022年モデルなので、古いのは古いのですが、気になった点で言うと、ブレーキです。現行のGRXはブレーキが素晴らしいです。おそらく、ブレーキレバーのピヴォット位置の最適化など、力率が優れているのと極めてローフリクションで軽くレバーを引くだけでパッドが動きます。アルテグラはフリクションも大きいし、効きさえも不満を持つようになりました。

このバイクが届いた直後は変速性能にもブレーキにも感動して、「ようやくロードバイクという乗り物は完成したのか」と感動したのですが、脳が最新のGRX Di2の変速やブレーキ性能にアジャストしてしまった結果、今ではこのエアロードは一世代古いと感じるのです。

そして、一番気になったのはチェーンのチャラ付き音です。例えば段差から降りた時、荒れた路面でRDのケージが跳ねてチェーンが暴れるのが気になりました。グリズルのGRXはクラッチの効きが強く、グラベルを走っても不快な振動音が気にならないという特徴があり、GRXのRDはXTのバッジエンジニアリングなのですが、この新型XTはとにかく音が静かだというレビューを発表直後から多く見ました。

音というのは非常に重要な要素で、スポーツバイクに於いては静かであればあるほど良いとされます。エアロードが届いた直後に感動したことの一つは、「タイヤが地面を切り裂く音しか聞こえないじゃないか」と思ったことです。E-MTBで音は最も重要視される要素の一つで、モーターのアシスト音がうるさいとか、下りでバッテリーがカタカタ言うシステムはネガティブなポイントとしてあからさまにレビューに反映されます。最近MTBで注目を浴びているのはベルトドライブにPINIONなどの内装変速を組み合わせたシステムです。とにかく走行音が少なく、ライディングに集中できると言います。

自転車に乗っている時は考え事がはかどるのですが、昨日のテーマはルワンダでアメリカのジュニア代表ベッカム・ドレイクが1xを使っていた理由です。彼はITTで4位になっており、TTバイクはもちろん1xなのですが、ロードレースでも1xの変速系を使用していました。今回のルワンダのコースプロフィールはとにかく獲得標高のある過酷なコースで、定石なら2xだし、他の選手も圧倒的に2xでした。

彼のIGアカウントとPCSをチェックして分かったのはおそらくTREKから機材サポートを受けており、グラベルレースでもかなり優秀な成績を残していることです。MTB、シクロクロスと今の時代の選手らしくバランス良く様々なカテゴリーのバイクを乗り分けているのですが、ここでなんとなく理由が見えました。17才であれば5才くらいから本格的にペダルバイクが親から与えられたのでしょうが、12年前と言えば2013年です。翌年の2014年にはSRAMが1xのシクロクロス用コンポーネントCX1をリリースしており、2016年にはMTBでEagleがリリースされて1xがいよいよ主流となっています。

つまり、ベッカム・ドレイクは生まれた瞬間から1xのネイティブで、ロードバイク以外の車種では1xだった可能性が高いのです。TTバイクでさえ1xなので、ロードバイクをわざわざ2xで使う理由は確かになさそうです。こちらは今年のツールでワウト・ファン・アールトが持ち込んだ1xのS5です。現在ではまだ1x12なので万人向けとは思えませんが、すでにSRAMもカンパもグラベル用のコンポは13速化しており、残るはシマノのみです。最新のGRX Di2やXTR/XT/DXはフロント変速機を廃してとうとう1x専用コンポへと舵を切りました。これはシマノとして歴史的な転換です。

今後、Dura AceやGRXも13速化されるのはほぼ確実で、Dura Aceに関しては公開されている特許情報から2x13と1x13の両方がリリースされそうです。2028年のロス五輪ではコースプロフィールに合わせて使い分けがされそうですが、2032年のブリスベン五輪ではもはや1xのコンポのみがマーケットで販売されており、なんなら14速になっているかもしれません。

もう少し現実的な話をすると、SRAMのハーフリンクチェーンのパテントが発見されたのは記憶に新しいですが、1xでのチェーンのたすきがけ問題を解決するソリューションをSRAMもシマノも開発しまくっていると思います。ハーフリンクチェーンかもしれないし、チェーンリングが変速位置に合わせて自動的に左右に動くようなソリューションかもしれません。これが1xでの多段化への重要な鍵になるはずです。

なぜ僕がここまで1xが確実にロードバイクでマジョリティになると確信しているのかというと、MTBで1xがあっという間に覇権を握った事実があるからです。なんせあのシマノがこれを読みきれず、さらに自慢のFD変速性能に固執した結果、SRAMに大幅にシェアを持っていかれたからです。つまり、いくらFDの変速性能が優れていても、FD自体が存在しない、つまり変速しなくていいという便利さには絶対勝てないということが証明されています。

MTBに関してはFDがなくなってチェーンリングが1枚になることで、BB周辺に余裕が生まれ、フレーム剛性やサスペンションのキネティクスで有利になりました。この頃には必需品となっていたドロッパーポストも問題で、FDのシフターが廃止されてこの場所はドロッパー用のレバーに取って代わられました。ロードバイクに関してはFDがなくなることにより、空力的に有利になるのと、操作系がさらにシンプルになります。

今年の世界選手権ではキガリの石畳でチェーンを落とす選手がいましたが、1xであればナローワイドなのでそう簡単にはチェーン落ちしません。そしてこれが最大の利点ですが、操作が簡単になることにより、初心者に優しくなります。たまにロードバイクでアウターを使わずにインナーだけしか使わない人を見ますが、チェーン落ちして怖くなってからFDを操作しなくなった、なんていう逸話もしばしば聞きます。それくらいFDというのはスポーツ自転車を普及させる上では鬼門でした。ロードバイクというスポーツ自体が機材としてよりアダプティブになり、さらなる参加者を期待できます。

面白いのですが、僕のエアロードよりもこちらの最新グリズルの方が乗りたいと思いました。ロードとグラベルとカテゴリーは違っても、より進化した変速系やブレーキの方が乗っていて楽しいと感じる場合があります。この現象はしばしば起こるのですが、スポーツバイクの機材は最新がやっぱり良いです。たまに分岐を間違えながらも、業界は正しい方向に進んでいると安心させてくれます。

そんなことを考えながらロードバイクに乗った日でした。

毎週金曜日発行 メルマガの登録はこちらから

ブログに戻る

コメントを残す

コメントは公開前に承認される必要があることにご注意ください。