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古くからのポートランド・ローカルにカルト的人気を博すトム・ピーターソンについて

弊社取扱、オレゴン州ポートランドに本拠を置くTonic Fabricationのトニーから自宅のキッチンで刷ったというTシャツが送られてきて、是非これを販売したいとのこと。メモによると「詳細はggrks」でしたので、早速掘ってみました。


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お恥ずかしながら、Pitchmanという意味が分からなかったのですが、調べてみるとジャパネットたかたの高田社長みたいな仕事をPitchmanと言うみたいです。


さて、この1930年生まれのトム・ピーターソンという人、ミネソタ州で生まれ育ち、ミネソタ大学を卒業して食品加工会社のエリアマネージャーとして東部17ヶ所のアメリカ / カナダの加工プラントを任されていたのですが、10年をこの会社で過ごした後に、家を売って1万ドルを用意し、伝説的なマッドマン・マンツという実業家 / 発明家からフランチャイズの権利を買ってポートランドに移住します。


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マッドマン・マンツこそがTVコマーシャルのパイオニアであり、自ら機能を極限まで削った都市生活者のための安価なTVをデザインした人物です。そして、エド・サリバン・ショーの合間に流されるコマーシャルに出演し、マッドマンという奇抜なペルソナを纏って大成功を収めます。


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また、彼は元々LA郊外の中古車屋からビジネスをスタートしたのですが、カーステレオの分野でもパイオニアとなり成功を収め、さらに1951年にKurtis Kraftという著名なコーチビルダーから2シーター・スポーツカーの製造権を取得した後にバッジを変更、マンツ・モーター・カンパニーを創業してマンツ・ジェットとして発売します。


キャデラック製V8エンジンを搭載し、アルミニウムボディパネルと取り外し可能なFRPトップを持った先進的なマンツ・ジェットは当時の市販車としては画期的な最高時速201km/h誇りました。最終的には4年間で400台を生産、現在では価値あるコレクターカーと知られており、Tバードやコルベットの偉大な先輩という位置づけにあるそうです。最終的にマンツ・モーター・カンパニーはマンツ自身の計算によると1台生産する度に1,000ドルを失っており、1954年に会社を畳むことになります。



さて、そのマッドマン・マンツから1964年にフランチャイズの権利を買ってポートランドに移住したトム・ピーターソンはサウスイースト(SE)地区に電気店を開き、順調に店を増やして1989年には3千万ドルを売るまでに成長します。この頃にはポートランド以外にもユージーンやワシントン州のスポケンにまで出店し、パシフィックノースウェスト全体にまでこのファミリービジネスは広がりを見せるのですが、これには70年代中盤にスタートしたTVコマーシャルが大きく寄与しました。


このTVコマーシャルは低予算で制作され、トム・ピーターソン本人が出演するのですが、フラットトップというその当時でも時代遅れなヘアスタイルのピーターソンが"Wake up! Wake up!"と叫ぶ、大変にインパクトのあるもので、これは1988年まで放送されたのですが、80年代には地元新聞社で「ポートランドで最も有名な人」と評されるまでになります。1987年にはピーターソン本人がこのコマーシャルを評して「おそらくポートランドで最も知られたコマーシャルだったが、最も愛された訳では無かった」述べています。


ピーターソンという人はアイデアマンだったそうで、新店舗オープンの際にバーバーを3人揃え、無料でフラットトップのヘアスタイルを提供したのですが、これが予想以上の人気で50人を数えため、それ以降バーバーを常駐させることにし、2002年の時点でも1週間に10人がフラットトップを求めて来店したそうです。


1989年には夫人の反対を押し切ってStereo Super Storesというチェーン店を買収するのですが、これが結果的に本業の足を引っ張ることとなり、1991年はチャプター11で破綻、1992年には全ての店を閉めることになりました。1995年にピーターソンは「巨大な全国チェーン店が我々のようなローカルビジネスを困難にした」と振り返っています。今のポートランドでは逆に、ローカルのチェーン店が支持を受けていますが、トム・ピーターソンという人物はある種、古き良きポートランドのアイコニックな存在になっているのです。


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さて、ピーターソンは大変にプローモーションに秀でた人だったのですが、プローモーショングッズの一つがこのリストウォッチです。普通はこのような奇抜過ぎるアイテムは作らないものですが、これがピーターソンたる所以です。


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このリストウォッチはニルヴァーナのカート・コバーンが愛用しました。コバーンはポートランドから比較的近いシアトルを地元しており、当然ピーターソンのことは知っていたでしょう。そして、このTシャツはワシントン州オリンピアのオリンピアビールのもの。カーディガンを好んだコバーンですが、このカーディガンはペンドルトンのようにも見えます。なお、日本ではグランジというムーブメントはワシントン州シアトル発だと言われていますが、実はパシフィックノースウェストのムーブメントで、実はポートランド発のバンドもそのムーブメントの一部だったそうです。


このように、ポートランドのリテイラーに過ぎなかったピーターソンはTVの力により、自身でも想像しなかったであろう影響をポップカルチャーに与えることになるのですが、それは最終的に映画にまで及びます。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』で知られるポートランド在住の映画監督、ガス・ヴァン・サントの『ドラッグストア・カウボーイ』に本人約で出演したり、リヴァー・フェニックスとキアヌ・リーブスが主演した『マイ・プライベート・アイダホ』には警察官役で登場します。


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ようやくこの画像を紹介できる所まで辿り着きました。トム・ピーターソンのTシャツです。Tonicのトニーがなぜ今このTシャツを作ったのか想像してみると、これはポートランド・ネイティブの誇りが込められているので?と思います。ポートランドには自転車産業があり、多くの人が従事していますが本当にポートランドを地元とする人は大変少ないのです。ほとんど人が他の州からチャンスを求めて流入してきているのです。なので、このTシャツをぱっと見てすぐ理解できるのは70〜80年代をポートランドで過ごした人で、理解できない人はストレンジャーということになりますね。



そう言えば、1月27日〜2月7日の日程で、阪神梅田本店8Fにて「ワンダフルワンダーランド ポートランドフェア」が開催されます。実は弊社でも少しだけ協力させて頂いております。内容をお聞きした所、ちゃんとポートランドしてます。凄いです。バレンタインの催事と同じフロアなので、週末は大変な人となりそうです。是非皆さんも足を運んで弊社の痕跡を探してみてください。


ポートランドのブームって、雑誌POPEYEが特集を組んだあたりでピークを打って、穏やかに収束して行くのかと思いきや、まだまだきてますね。ポートランドの良さというのは個人的には大阪とか福岡の良さに近いと思っています。基本的に平地で海と川があり、空港が近く、1〜2時間も移動すれば自然があり、物価が安くて人もコミュニティも面白い、その割に結構都会という。結局、日本はアメリカより遙かに小さい面積で海に囲まれているので、この条件に合致する都市は多いと思います。なので、注目を集めているのかな、と思いますけど。


あ、上のTシャツは近日受注しますので、宜しくお願いいたします。ポートランドに着て行くと人気者になれること、間違い無しです。ぜひフラットトップのヘアスタイルもお忘れなく。


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