« P.D.P 3 | メイン | それでも車輪は転がり続ける訳です »

トム・リッチーとゲーリー・フィッシャーの話

興味深い話を聞いたので、折角なので皆さんとシェアしたいと思います。


1970年代にMTBという乗り物を発明したのは誰とは特定されておらず、通常は北カリフォルニアのマリン郡にて同時多発的にそのムーブメントが生まれたと言われています。しかし、1979年にトム・リッチーと友人のチャーリー・ケリーが共同で設立したMountain Bikes社が最も早くこの名前を使った言われており、Mountain Bikes社の製品はトム・リッチーのフレームを採用していました。この3人は真のレジェンドだと言っていいと思います。


1983年にこの3人は(ドロドロの裁判劇によって)袂を分かち、Mountain Bikes社はゲーリー・フィッシャーに売却されてGary Fisher Mountain Bikes社と名前を変えます。しかし、ゲーリー・フィッシャーは1991年にアンレンという台湾の会社に売却、この18ヶ月後、アンレンはさらにトレックに売却します。アンレンはこの過程でボロ儲けしたらしいのですが。以降、現在までGary Fisherブランドはトレックの傘下だったのですが、結局は今年からブランドは消滅、トレックブランド内のゲーリー・フィッシャーコレクションという扱いになってしまいました。


対照的なのがトム・リッチーです。リッチーブランドは一時期、スペシャライズドがシェアホルダーだった時期もあったそうなのですが、トム・リッチーがその後、再び買い戻しているそうで、現在も自身が100%のオーナーなのです。MTBを生み出したレジェンドの一人が、現在も自分の会社のオーナーで有り続けているというのは奇跡のような事で、これは今となってはトム・リッチーだけです。しかも現役のサイクリストであり、フレームビルダーでもあるのです。


トム・リッチーは現在、とにかく散らかった(messyと表現していた)工房をパロアルトに持ち、製品の研究、開発を行っているそうですが、変人と呼んで正しいキャラクターの持ち主なんだそうです。例えば、ヨーロッパに出張する時は自転車の箱、自転車のウェア、そしてクレジットカード1枚で行っちゃうとか。また、現在リッチーブランドはロード部品の分野でも名高いですが、リッチー本人がそれらをロードバイクに取り付けて、ステルビオ峠を登り、下りはダートで下るという、過酷なテストをしているそうです。ハンパ無いすね。


そして、現在も会社を100%所有しているということは、さぞかし経営のセンスがあるのかと思ったら、経営のセンスは全く無いそうです。つまり、経営や製品の開発に秀でた人達に囲まれており、その最終的な判断を下しているだけなんだそうです。つまり、優秀な経営者ということになるのかな?凄い人ですね。


で、ゲーリー・フィッシャーとの話。有名だと思うのですが、トム・リッチーとゲーリー・フィッシャーは今だに不仲なのです。で、10年ほど前にイタリアで、リッチーのグループが会食する機会があり、そこにゲーリー・フィッシャーが招かれたそうです。トム・リッチーとゲーリー・フィッシャーがテーブルを同じにするのは、これが10年振りだったとか。


2000年頃ということは、フィッシャーがトレック傘下で29erのアイデアを具現化し始めた時。その席でフィッシャーは「29inchのMTBタイヤを作ろうと思っている」というアイデアを披露したそうなんです。しかし、リッチーブランドでタイヤを作っていたトム・リッチーは真っ向から反論、完全に口論になってしまったとか。


KU6X3255.JPG
このストーリーを聞いてめちゃめちゃ面白かったのは、NAHBSでこのバイクを見たからです。リッチーが29erを展示したことはかなり話題になりましたからね。しかも、タイヤはシンクロス。シンクロスも現在ではリッチー傘下のブランドですから。ゲーリー・フィッシャーは今、どう思ってるいるのでしょうか。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.bikedaily.net/mt/mt-tb.cgi/1036